俺と陽奈乃と彼女の生きる道 第三章

俺と陽菜乃と彼女の生きる道 第三章

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第3章:悪魔が笑う

 

 

「お、お前が……お前が陽菜乃をっっ!!」

 

俺はすぐさま、サーラに飛びかかる。すると翼をはばたかせ、彼女は身軽に俺の攻撃を避けてみせる。

 

「なんで、なんで陽菜乃が……苦しまなきゃいけないんだっっ!!!!」

 

続けざまに俺はもう一度殴りかかる。だが案の定、自由に空を飛び回れるサーラには、俺の攻撃など当たらなかった。

 

「まったく、真相を知った途端襲ってくるだなんて、あなたって本当に愚かね……。それに陽菜乃ちゃんが苦しんでるのは、貴方のせいでしょ……坊や。」
「ゼェハァ、ゼェハァ……な、何を言ってるだ。お前の魔法のせいで陽菜乃は……。」
「だ・か・ら、私の魔法は私の魔法でも、その魔法を発現させたのは貴方でしょう? 強力な魔法を発動させるには『人間との契約』が必要不可欠なの。例えばさっき私が突然現れたのは貴方が私の名前を呼んだから……それが契約となり魔法が使えたわ。でも今は、ソレができないからわざわざ飛び回らないと貴方の攻撃を避けられないって訳。もう気が済んだかしら……翼を使うのは疲れるのよね。」
「くそっ……くそぉぉっ!!」

 

俺はやり場のない怒りを、再び空へぶつける。
だがそれだけでは何も現状は変わらない。悔しいが俺は何よりもまず、この悪魔から事の全てを聞きださねばならないのだ。

 

「お前、陽菜乃に一体何をしたんだ? ただ縁結びの魔法をかけたんじゃなかったのか?」
「そう……あれは正真正銘、縁結びの魔法よ。でもねぇ、貴方みたいな取るに足らない男と陽菜乃ちゃんみたいな素敵な子、普通の魔法じゃ間違いなく結びつけられないわ。だからそこを上手く利用して、私は思いついちゃったの……『だったらあの子から対価を奪えばいい』って。」
「対価だと……!? お前はあの時、別に何もしないって言ったじゃないか!」
「その通り。だから私は言ったじゃない……『貴方には』何もしないってね?ほら、私は一つも嘘をついてないでしょ?」
「……!?!?」
「ふふふっ……貴方が馬鹿で助かったわ。お陰で貴方の大好きな陽菜乃ちゃんの、い・の・ち?正確には彼女の寿命を、奪わせて貰ったの。と〜っても、美味しかったわ。本当に御馳走様……ふふっ?」
「おい、ちょっと待てよ……。お前がもう食べたっていうのか!? じゃあ陽菜乃の命は……あいつの寿命は今どうなってるんだよ……!」
「残念ねぇ、貴方がもう少し良い男だったら数年分位は残せて上げたんだけど、もう殆ど残ってないの。正確には分からないけど、もう24時間を切っちゃったかしらね?」
「おい、馬鹿な嘘をつくんじゃねぇぞ! 陽菜乃が、陽菜乃がそんな……もうすぐ死ぬだなんて……そんな嘘を……」

 

プルルルッ……プルルルッ……

 

「ほ〜ら、電話が鳴ってるわよ。出なくて良いのかしら?」

 

サーラは不敵な笑みを浮かべて俺にそう呼びかけた。
電話の宛先は陽菜乃のお母さんだった。俺は震える手で、携帯の通話ボタンを押した。

 

「もしもし……均太です。」
「均太くん今どこにいるのっ! 陽菜乃が……陽菜乃が……」
「お、落ち着いて下さい。陽菜乃がどうかしたんですか?」
「ぐすっ……お医者さんが言うには……陽菜乃……今夜が山かもしれないって……うぅぅぅっっ!」
「そ、そんなっっ……嘘だろっ……!?!?」

 

サーラがクスクスと俺をあざ笑った。
残念な事に、彼女の言葉は決して嘘ではなかったのだ。

 

「残念だけど、悪魔は嘘をつかないわ。嘘に頼らず言葉巧みに人を騙す……だから悪魔なのよ??」
「う……うぅぅっ……うわぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

 

俺はまた情けなく、声を張り上げて泣き叫んだ。
だが恨んでも、恨んでも……悔やんでも、悔やんでも……現実は決して覆らない。
俺はただ声が枯れるまで泣き叫ぶことしかできなかった。

 

俺のみっともない泣き声と高笑いするサーラの声だけが、その場に響いたーー。

 

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