肥らせの迷宮
四人は上ではなく下に進んでいた
それと言うのもあの後すぐに行き止まりになっていて
冷蔵庫の部屋に別の出口があったという光樹の記憶を頼りに戻ってみたところ
その通り来た道とは別の下への道に続いていたので
今度はそちらを進んでいたのだった
光樹「統伎さん、ここらで一息つきませんか」統伎「・・・」
公恵「そ、ソウダヨ、あたしもうくたくたで・・・」 統伎「・・・」
有葉「統伎」 統伎「・・・・・」
変貌を遂げてしまった有葉だったがしかし心情面での影響はあまり見られなかった
肉体面でも移動が辛そうだがそれでも光樹についてこれている
それよりも問題なのは統伎の方だった
あれから一言も口を効かないででうつむいたままで、いや今口を開いた
統伎「ちくしょう!!俺のせいでこんなことに!!」
公恵「いや!違うよ!さっきも言ったけどアレは・・・」
有葉「そうです、貴方も光樹さんも公恵も食べたのにこうなったのが私だけなのは
運かそれともこの状況を仕組んだ者の・・・」しかし統伎は全く耳をかさず苛立ちのままに走り出す
その全力疾走は公恵、有葉はもちろんのこと光樹も追いつけずあっという間に統伎の姿は見えなくなってしまう
だが、統伎が姿を消した方から玄和が姿を見せた
玄和「光樹さんじゃないすっか!」 光樹「玄和さん!」
あの時落とされた玄和はその体力にまかせてここまで進んできたのだった
玄和「兄ちゃん一体どうしちまったんすか・・・」
光樹「えっ、統伎さんに会ったんですか」
玄和「何かすごく怒ってて・・会うなり「お前なら俺の代わりには十分過ぎるだろ!」
って言ってそのまま行っちゃったんすよ・・・」
公恵「お兄ちゃん・・・」 有葉「統伎・・・」
玄和「え、アナタ達は?」 光樹「いや、実は」
公恵「 コヤの鍵の隠し場所は?」 玄和「 裏庭の樅の木のてっぺん!・・・って」
「それを知ってってことは、公恵なのか!?」
玄和は変わった妹に驚く、その次は有葉の見せる怒りの気にあてられ怯んだ
有葉「あれは貴方達の仕業だったのですね!」 玄和「!この怒り方は、母さん!?」
光樹から簡単な説明を受け理解は出来た玄和、しかし納得は出来てない様だ
玄和「それで兄ちゃんもあんなに怒ってたんすか・・・」
「オレに自分の代わりが出来るって言って・・・」
公恵「お兄ちゃんそのことを・・・」
光樹「?、どういうことですか」
有葉「今は放っておきましょう、さすがにしばらくすれば頭も冷えるでしょうし」
玄和「じゃぁひとまず休憩しようよ、オレが来た方に少し開いたとこがあったんだ」
「・・・あと、服もちらっと見えた・・・」 公恵「アッ・・・」
ここで自分の乳房が半ば露わになってることに気付き太い腕で隠す公恵だった
統伎は座り込んでいた、あれからまっすぐ暴走していたが
行き止まり(玄和が落ちた場所)にあたってしまい止まらざるを得なかったのだった
統伎「・・・ちくしょう!何が『俺の代わりになれる』だ!」
苛立ちのまま振り回した右拳が壁を砕く
統伎「アイツがそういうことを嫌がってること位知ってるってのに・・・!」
玄和は中学1年生の13歳ながら自分に迫る体格と身体能力を有する
しかし、その内面は紛れもなく13歳の子供だ
(光樹が牛坂家に勤めるよりも)以前学校で体のことを同級生達に悪くからかわれて
数日間だが不登校になったこともあった
あの時は心配で仕方なかったが後になって考えると少しだが、
からかわれたぐらいで何をやっているのかとも思うようになった
だが自分が似た状況に陥ってやっと気付く
外からではどんなに小さく見える問題でも本人にとってはとてつもなく大きい問題だと
統伎「・・・もどらないとな・・・」ともかくここにいても仕方が無い
謝るなり脱出させるなりにしてもまずは玄和、それと公恵達と合流しなくてはならない
今度は元来た道を上がっていた統伎だったが、数十メートル程先に
玄和と有葉達の姿を見かけ、つい止まってしまう
統伎(母さん達と合流したか、ってあのカッコウは・・・)
(メイド服じゃねぇか!!なぜに!)
今 光樹、有葉、公恵の三人は巨大なシックな造りのメイド服を着ていた
『なぜに』と言われたがそのワケは・・・
有葉「まさか、着れる服がこれしかなかったとは・・・」
公恵「まぁあのままよりかはマシでしょ、ソレに今の母さんに似合ってるよ」
「・・・でも光樹さんは着ちゃだめでしょう・・・」
光樹「いや、だって私もいつ太っちゃうか分かりませんし」
今の四人の様子には余裕が見え、少なくとも統伎への怒りは見られない
統伎(よし・・) 出て行こうと一歩踏み出す統伎 足音が微かに響いた、
そして子供としての敏感さと大人のそれを凌ぐ聴覚を持つ玄和は
その音を聞き逃さなかった 玄和「兄ちゃん!」
玄和の全力疾走は統伎に反応する間も与えずその距離を縮める
しかし優れた感覚も使われなければ意味がない
少し注意すればあそこからでも見えたであろう出っ張りに足をすくわれ
地面に顔面を突っ込ませてしまう
統伎「玄和!?」 玄和「 うん、大丈夫」統伎の叫びにすぐさま返事を返すその様は
無傷以外のなにものでもないと統伎と光樹達を安堵させた
公恵「全く転ぶのはお兄ちゃんだけでいいってのに」
玄和「はは、兄ちゃんに代わりになれって言われたからね、ん?」
と、玄和が自分の顔に返ってくる床の感触に違和感を抱いた
少しまさぐってみると、どうもそこに小さなスキマがある様だが・・
統伎「!! 玄和!無闇に動かすな!」玄和の動きに気付いた統伎が叫ぶ
しかし優れた感覚も活かせなければ意味がない
玄和の耳は統伎の声をすぐさま拾ったのだが、頭がその対応を考えつくまで、約42秒を要した
そしてその41、91秒前には玄和の手が床を動かしてしまっていた
玄和「うわっ!?」 そこから黒煙が吹き出し玄和の体を後ろへ吹き飛ばした
統伎「!!」 光樹「!?」 公恵「??」 有葉「!玄和!」
ここで事態を理解し、行動できたのは熟年者としての精神と
若者としての肉体を持つ有葉だった
宙を飛ぶ玄和は自分のすぐ後ろに落ちると気付き少し下がり玄和の体を受け止めた
有葉「よし !」 が、どうしたのかここで僅かながら姿勢を崩してしまう有葉
70kg越しの巨体はその僅かな変化から大きな遠心力を生じさせ
足の隙間が微かになるほど太くなってしまった足はそれに耐えきれず、
結果有葉は二人の息子と同じ過ちを犯してしまう そうコケてしまった
ぴたーーっん たっぷりと肉の付いた背中は床との衝突で擬音ではこう表現する様な
軽快な音を立てる 公恵「お母さん!クロワッ!」 しかし公恵はそれを笑えなかった
転んだ母への心配もあったが吹き飛んだ玄和への心配が大きかった
光樹「玄和くん!有葉さん大丈ですか!?」
動転した心とメイドという立場から有葉にも声をかけたが
背中から転び頭も打ってないから大丈夫だと理解していた
問題は玄和だ、吹き飛ばされこそしたが有葉が落下を防いでいる
しかし問題はそこではない
統伎「そんな・・・玄和まで・・・玄和もあんな目にぃっ・・・!」
玄和「はは、ボクも母さんや公恵と同じ目にあっちゃったか」
しっかりと意識を取り戻した玄和、笑ってるのは自分の変化に開き直ってるからである
玄和は小さくなっていた、有葉と同じように若返った とは言えない
今の背丈は同年代の少年の平均身長をやや下回るぐらいだ
面識のない人に変化前と変化後を見比べどちらが変化してしまった方かと言うと
大半が変化前を選んでしまうのではないだろうか
有葉「玄和・・・」 公恵「クロワァ・・・・」 この二人はまだ心配している
なにせまだ終わってないことを身をもって知っているから
統伎はそのことを知っていたからこそ、動けずにいて
光樹は知ってて目を反らしている 何せ今異性の少年が服を着れていないのだから
玄和「さて着替えないとね」 と持ち込んでいたスーツケースから
服一式を取り出す 女物の
公恵「それ私のじゃん!それを着てイイとは言ってないから!」
有葉「それ を? どういことですか? 公恵」
墓穴を掘る公恵とそれを見つける有葉
どうやらいつもと同じように振る舞えるほどに落ち着いたようだ
玄和「そのカラダ見た時は無駄になるかと思ったけどやっぱり持ってきてよかった・・・
のかなぁ?」 そうほざきつつ、まとわりつくブレザーを脱ぎ捨てる
露わになった上体には胸があった 背丈に比べ大きめに膨らんだ乳房が
と、その胸が更に膨らむ 体全体と共に
短くなっていた首は顎と首元の膨張により更に短くなり
というか首が消えてしまった、頭と体を繋ぐのはたっぷたぷに膨れた顎だ
その下の腕は長さ、太さ共に公恵らには及ばないが立派な丸太腕だ
しかしやはり短い、もう少し胴体が膨らめば埋もれだしかねない
さて(肥満化)前から大きかった胸はどうなったのかというと
やはり大きい、光樹のそれを凌いでいるかもしれない
その巨乳は若さ故に立派な張りときれいな形を保ち、
幼さ故にお腹に乗っかっていた
胸が乗っかるのだ お腹はそれ以上である
パンパンに前に張りドンっと胸下から下っ腹に上下に広いその太鼓腹は、
大人に張り合う子供
その微笑ましい面の象徴と言えるだろう
「ひゃっ!」 変異に順応しきってない神経では更なる変異に反応できず
玄和はズボンだったものとパンツだったものに足をすべらせる
性別をはっきりと示す巨大なバレーボールの様なお尻と
運動量を示す太ましく脂の乗った給食鍋の様な二本の足が見えた
ぴたっん 「ほっ!」 外側(見た目)は変化しても内側(運動能力)は変化しないのか
玄和はたぷんと肉の乗った背中の反動を活かしもとの姿勢に戻る
しかしそれにより生じた圧力が更なる変化を招いた
座り込んだことによりお腹の肉が変形し、
へそから上、へそから下、下っ腹といった具合に三分割され
太鼓腹は三段腹へと変形したのだった
公恵「 ハイ、これ」 ここで玄和に手渡されたのは公恵らと同じメイド服、
それも玄和の体格に合わせたサイズの
有葉「はやく着替えなさい」 玄和「う、うん 分かった」
玄和は着替えだすが、なかなか出来ない
メイド服の着方ではないがその発育した体の動かし方が良く分からない様だ
今も落ちた上着を拾おうとしているが大きなお腹のせいで手が届かなかったりしてる
その様を有葉はかすかな笑みで、公恵は大きな笑みを浮かべ見守っている
玄和「ふぅーー、やっと着れたよ」
玄和がその体を(ほぼ)メイド服の中に納めたところで
全体を見返してみよう
低い背丈に満遍なく脂肪を付けたその体は発育が良いと言うよりも肥満している
子供が大人になりたくてよく食べよく動いた結果横に大きくなってしまった
そんな微笑ましい面の象徴と言うのがやはりふさわしい
それを裏付けるかの様に頭 顔は(転換)前からほどんど大きくなって
肉が付いていなくて大きな体の上でちょこんと可愛らしいままで乗ってましたとさ
束井麻「やれやれようやく下ごしらえが済みましたか」
統伎「!!!」 その声を聞き取れたのは統伎だけだった
これは大人並みの注意力と大人を上回る聴力によるもの では無い
池の上では底は見えない しかし池に潜ると底は見やすくなる そういう訳だ
統伎「つかいまさん・・・逃げてください!」「ここは罠が、仕掛けがた、たくさんあつて」「みんな、みんなあんな目に」「だから、早く!!」「光樹さんと公恵と玄和と母さんをつれへ逃げてください!!」 統伎は完全に安定を失っていた
束井麻「ええ、もう少ししたら3人は地上へ返してあげます」
統伎「ほ、おねがいしますぅ!」束井麻「キミが絶望した後にね」
有葉 公恵 玄和「!?」光樹「束井麻さん、何言ってるんですか」
「それに地上への帰り道分かってるのならどうして・・・?」
束井麻「帰り道位知っている、何せこの迷宮は俺が作ったのだからな」
束井麻「それに俺は束井麻雨夫ではない」
束井麻「ヤツはとっくに死んだよ」 ここで束井麻の姿が、外皮が砕け散り
クッキーの様な濃淡な茶褐色の色をした、
人を象った人形を象ったかの様な怪人の姿を露わにする
クッキーマン「俺というファントムを最後の作品として残してな」
絶句する光樹達、統伎もまた絶句していた 束井麻が死んだという事実に
クッキーマン「さていい具合に素材が絶望してきた所で、最後の仕上げといくか」
クッキーマンが軽く統伎を持ち上げ後ろへ去っていった
光樹達はすぐに後を追うが・・・・!
牛坂玄和(うしざか くろわ) 13歳
統伎の弟で公恵の双子の兄
身体能力に恵まれているが本人はその体格にコンプレックスを抱いてる
その為、自分とは対照的な公恵と仲が良い
名前の由来は黒毛和牛
(くろげわぎゅう→ぎゅう・くろげわ→うしざか・くろわ)
165cm 67kg 転換前
→146cm 36kg 75・60・67 転換後
→147cm 67kg 92・101・88 肥満化後